別冊トランスアーツ|「記憶の撮影」人形遣い田中純の世界


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何も持っていないっていうのは強い

いやあ、不安定ですよ。でも、残らないから、だって、いつそれが時分から逃げていっちゃうか分かんないでしょ。そうすると、年取っていけば、技術は身についているけど、そういう一つの感覚みたいなものは甘くなってくるから。

ものを持つとだめになる。財産もですか

今の歌舞伎が駄目になったというのは、そこなんですよね。

郡司正勝さんん早稲田の教授がいたんですけど、彼と話していても、このごろの芝居は面白くないねと。で、何でなんですかね、って言うと、サラリーマンになっちゃったんだよと。

それだけ、御客がある意味、‘馬鹿‘になっちゃてんだから、その‘馬鹿‘に合わせれば楽だと。すると、どんどんどんどん楽になっちゃって、で一人の御客が持ってきてくれた、入場料をね、ありがたく思わなくなっちゃう。

芝居は観客のレベルに合ってしまう

というのはやっぱり駄目なんですよね。だから、昔の役者ものね、このごろの御客は駄目だって。

江戸時代にも、言ってるんですよね、みんな。だから役者もすぐ駄目になるんだって、言ってるんですよ。

だからそんなかで、乗り切っていこうとしていたわけで、稽古して、だから芸が落ちていかなかった。慣れ合いになっていないんですよ。

今の芝居っていうのは、御客と慣れ合いになっているから。
だから、トチったって笑ってくれるし、許してくれるし。

御客が役者を育てる

どうして、(まっとうな)御客が少なくなってきたのか、考えていないと、自分で自分の一つのものが見えなくなる。




ある時期、テレビにも携わりましたが、結局否定されましたね

最初ね、今まで、視覚のものがなかったんですよね。

目で見て、耳で聞いて、視覚から訴えるものがどんどん進んでいくと、観客自体も、それに引っ張られていくじゃないかなと。

そういうものを制作していくのがいいんじゃないかなと思った時があったんですね。最初はそう思った。

で、そのうち、ん、いやあ、だめだなあと。企画も悪いし。

制作過程が殺風景だと

やはり、観客がいて、成り立つものですから。
観客の目じゃなくて、ただ、個人のプロデューサーとか、そういう人たちの目しかないから、きついですよね。

人間、芝居っていうのを演劇というんですけど、演劇っていうのをどう考えていくか、っていうことになると、ほんとにその、文献もないけど、そういう一つの資料がないんですよ。

今、だから、ビデオ撮って、DVDで撮って、やるわけだけど、それはやっぱり、あるときには、カメラ据えっぱなしで絵を撮っちゃう訳だし。

それで、そこにカメラがあれば、ちゃんとそこには一人のカメラマンの眼があって、でもそれはカメラマンの目でしかなくなっちゃって。

そうすると、観客が、選択して、聴き、見、っていうのがなくなっちゃって。

だから、人間って、自分がふっと、それに引きずられたり、集中したり、やるわけですけど、そうすると、他のものを見なくても済む訳です。

テレビ文化には観客との緊張関係がない

一時、電気紙芝居なんて言っちゃった時代があったんだけれど、ほんとに、そうなっちゃったんですね。

何で、どうしてこんなことするのって、意味がなくなってしまって。

で、それこそ、観客のレベルがこれだから、視聴者のレベルがこれだから、これに合わせて作っていく。
そうなると、くだらないバラエティ番組だとか。

テレビをご覧になることはあるんですか

ありますよ。でも、ばかばかしくなりますよね。

急にまじめな番組とかは、たまにしかないし。
それは時間かけて作っている番組ですけど。

よくみられる番組は

このごろ、ドキュメンタリとかは見なくなってしまいましたね。
というのは、やっぱり、作っちゃってるから。

作って、こう流すとなると、やっぱり、こう合わせるしかなくなる。
この辺がもっと知りたいなとか、この辺、突っ込んでほしいなとか(はないんですよね)。

映し絵はいかがですか

絵を映すわけですが、「幻燈芝居」ですよね。
でも、僕は、幻燈芝居として作る気は、僕はなかったし。

そこに映し手がいるっていうのが必要で、「映し絵師」っていう意思が必要で、だから、それがないと、やっぱり電気紙芝居とおんなじになっちゃう。
というふうに。

で、いろいろとやったわけですけど。

田中喜平さんが手掛けられました映し絵も前衛的でした

新しい一つの映像っていうんで売れたんだと思いますけど、こう目新しさみたいなものをやっていたから、そうすると、どんどん映画が出てくれば、向こうは画面も大きいし。










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